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2011.02.23 A2Z-G 追われる
A2Z
熱くて思わず離したライターは、蓋が熱で溶けて二度と開かなくなってしまった。
和蝋燭で、熱しそびれた鉄の棒を炙り直すとそれは煙をあげた。

鉄の棒とは、爪を剥がそうと準備していたドライバーだった。

それを、Gの肌に押し付けると、思っていたより声があがらなかった。
短く、耐えきれないように声が漏れた。

「ご主人様、愛しています。」

途切れ途切れに、悲鳴の隙間をぬって紡がれた言葉は、今の私には届かない。
視界は赤だ。
赤く染まって頭は、別物のように、キンと血をあげて、動かない。固まってしまった。
いや、どこか一方向だけを目指しているかのようだ。

ドライバーを外すと肉は黒く焦げていて、鉄には皮膚がくっついていた。

「ご主人様が望むならば、許されるならばどんな形でも一緒にいたいんです。」

とGは這いつくばって、床を濡らした。
止まらない涙で床を濡らした。

私はその床を上から赤く濡らすことにした。
何故なんだ。何故なんだろう。

私がする、どんなことにも、Gはあまり大きく反応しなかった。
それよりも言葉に強く反応した。

「お前は、いらない。どんな形になったっていらない。」

指先に針を刺すと、気を失った。血は流れ続けているのに。

人に刺す為にない針は、こちらの手が痛くなる程であったから
頬を叩いて起こして、今度は手袋を嵌めて、押し込んだ。
濡れたそれで、肌に絵を書いていると、笑い声が響く。

「利用されるのだって、なんだっていいんです。お金だとか。一瞬でも笑顔が見られるなら。」
「私はお前に顔を見せたくもない。」

手を吊り上げて、鞭を振り回すと、うっとりしたようにGは私を見つめる。
肌は赤黒くなっていく。

「好きなんです。ご主人様。ご主人様とは線を超えてしまった。」

視界は赤だ。
にじみ出てくる血の色。

「知っていますか、ご主人様とはプレイした次の日に心に響くんです。」

Gが誰を見ているのか、不安になって、私はまた鉄を押し付けた。
でもそれには、あまり反応はないのだ。

「ずっとずっと一緒にいたい。」

焦げた肌。


言葉が私を追い立てて
逃げるように、赤に染まっていった。

染まっていくと、私の口からは笑い声が漏れていった。
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