2ntブログ
2010.11.06 A2Z-E 掌の檻2
A2Z
カレンはEに彼女の時間を惜しみなく使った。
Eは頑丈な鎧を着ていた。
その鎧を脱がせてみたいと彼女は思ったのだ。

どうして、カレンはその鎧を脱がせたくなったのだろうか。
カレンは鎧を着ている人間を見ると無性にそれを剥がしてみたくなる趣味を持っていた。
しかしそれは全ての人間に対して持つ欲望ではなかった。

Eと出会うまでも、カレンは鎧を着た人間のそれを剥がしてきた。
その為に、あまり時間は要さなかった。

Eは簡単にはいかなかった。

カレンはEとたくさんの時間を過ごして、彼が鎧を脱ぐ時にも遭遇した。
しかし、気が付くと彼女の意志とは別に、彼はまた鎧を着ていた。
Eはカレンに鎧を脱がされたのではなく脱いだのだ。
いつも鎧を着ていたら流石に重く、疲れてしまうので自ら脱ぐのであった。

カレンはやる気が出た。

何故、Eが鎧を着ていたかというと無論それは身を守る為である。
彼は痛みを知っていた。

鎧を着ていない方が気持ちが良いよ。
身体は軽くなるし
抱き合った時には体はもっと重なるよ。
カレンは何度も何度もそう語りかけた。

そして遂に鎧を脱がせることに成功した。

カレンは、そうして鎧を脱がせて、痛めつけるのが好きだった。
カレンは鎧をEが見ていないうちに、さっさっと捨ててしまっていたのだ。

鎧をなくしてしまったEは、カレンからの攻撃に悶えるしかなかった。
それでも、この時ならまだ、逃げることも攻撃仕返すことも可能だった。

Eはカレンに恋をした。

鎧を脱がされた人間は恋をすることを許されるのだ。
だからEは逃げもしなかったし、攻撃もしなかった。

ただ、与えられる痛みに悶えて、カレンが笑うのが嬉しかった。
今まで鎧を着ていて感じなかった痛みを感じることが幸せにさえ思えた。

しかし、カレンはそれでも満足いかずに、Eの手をひいて檻の中へ閉じ込めてしまった。
鍵をかけてしまった。
彼はそうしなくても逃げないのに。

カレンはその上、Eを裸にして、武器も取り上げてしまった。
Eは言われるがままに従った。

カレンの檻は甘美な空間に見える。

だけど、甘美であるのはカレンが檻の前に現れた時のみだった。
カレンは自分が檻の前に立つ時のみ、明かりをつけた。

カレンがいない時には暗闇の中、じっと、何もすることもなく、待つことしかできなかった。


何日も何日もカレンが現れない時があった。

そうして現れたカレンを、Eは抗議するように見つめた。
すると、カレンは鍵を開けた。

「嫌になったなら、出て行きなさい。」

Eは檻を出ることができなかった。
Eはカレンと一緒にいたかったから。

カレンは抗議したEに罰を与えた。
無理やりに檻の外に出してしまった。

「お願いですから、檻の中に戻してください。」
「檻の中にいたら、私はこれからもお前を痛めつけるよ。それでもいいの?」
「はい。」

もう檻も鍵もいらなくなっていたのだ。

「それならば、私と約束をしなさい。」

カレンは、その唇をすぼめて、悪魔のような言葉で縛り付けた。

「どんなことがあっても、私に憎しみを抱かないと。」

こうしてEは、また檻に戻った。

今度こそ、ただ待つことしかできなくなって、鍵がしめられる音を快感の中聞いた。
2010.09.08 A2Z-D 掌の檻
A2Z
男の子は私の指に指をしっかりと絡ませて、逃げてしまわないかのように引き寄せた。
そうしなくたって私は逃げないし、もし逃げたいとしたら、そんな拘束じゃ引き留められない。

そうやって夜の道玄坂を下った。

渋谷のラブホテルに来るなんて、何年ぶりだろう。

「いいところ知ってる?」
「うん、そこ左入ってすぐ」

信号で止まるとDはおどけたような表情を作ってみせた。

「誰と来たの?」

私はそれに負けじと、微笑み返して
「何人とも来たからわからない。」と言った。



酔いが身体中に浸透して気持ちよくて、私はそれをベッドに放り投げた。
だけど私は身体中に浸透しているそのアルコールが何かわからない。
食後酒は、いつも何を飲んだか覚えていないのだ。
ただ、あのお店であの時飲んだあれは美味しかったという記憶しか残っていない。
名前を聞いても、酔った頭ではそれが覚えてられないのだ。元から覚えるつもりもないのかもしれない。
もう二度と同じお酒が飲めない気がして、私はその刹那っぽさも好きだから。
どうしようもない。

この快感に浸った身体に、これから更に快感が与えられたらさぞかし気持ちいいだろう。
と、予感に笑みがもれる。

Dの指が身体に伸びて絡む。
それは、本当に気持ちいい。

あのトロリとして甘くて強いお酒が好き。

「どうしてこんなになってるの?」
「気持ちいいから、気持ちいいこと好き」
「好き?」
「好き。」
「何が好きなの?」

言葉にさっきまでの表情と違うものがあったから、見てみるとそこには眉をひそめたDの顔があった。
私の好きな表情。

「何が?」
「…Dのことが好きだよ。」
「俺のどこが好き?、ねぇ、」

私は短く区切るようにして、声を漏らした。その間にDの声が聞こえる。

「…わかんない、」
「どこが?」

言わないなら、というようにDの指が弱点を撫でていく。
酔いと快感で回らない頭は上手いことが何も言えそうにない。
もしかして、その本音を狙って聞いてる?

「ないしょ」

何か決定的なことを言ってしまいそうで、恐くて、私は何も言えなかった。

「俺は本当のことしか言わないよ。夢ちゃんのことが好き、
好き」
「…私もだよ。」
「でも、一番じゃないでしょ?」

パチリと目が合う。
もう何度も繰り返してきた問いだから、私は素に返ったように、おかしくて笑い声をもらした。いつものように。

「ふふ、そんなこと」
「知ってる。一番じゃないの知ってる。だけど、俺は夢ちゃんのこと一番好き。」

また快感に引き戻されて、喘いだ。

「ひどい、ひどい。
こんなに好きにさせられて、生殺しだ。」

傷付いたような表情を浮かべるDに抱かれるのが私は好きだ。
私はこの男の子を深く悲しませることも、苦しませることも、喜びを与えることもできる。

そうしないで好きなようにされて、腕の中で悶えて、熱情をぶつけられ注がれるのが気持ちいい。

「いつまで続くの」
「ずっと、」
「ずっと生殺し、こんな風に?」

そうして、私の身体を指が動く。
これってどちらが責められてるいるんだろうか。

ずっと生殺し。

気が狂って壊れるギリギリまで苦しませて私は快感を得るつもりだよ。
私の手の中で、喘ぎ悶えて、弄ばれればいい。
そうして最後には壊れて捨てられればいい。

その選択しか既にないのだけどね。

もう檻の扉は閉まっている。
A2Z
私とBは、SMパートナーとしてうまくいっていたのだ。
だけど、その内に我慢ができない程に欲しくなってしまった。

私はあれだけ誓ったというのに、快感に手招きされてその誘惑に落ちた。
私の誘いにBは恋人になるのは辞めようと一度は断った。
始まってしまった関係は終わってしまう、ということくらいはお互い既に知っていたのだ。
お互い子供だったけれども、それくらいはわかっていた。

知っていながらも、私はBの手をしっかり繋いで、誘惑の先へ連れて行った。
怖がる瞳をもう片手で塞いで、連れて行ったのだ。


果たしてそこには、涙が滲む程の幸せがあった。


私とBは、「二人には終わりがないと信じよう」と口に出して恐怖を取り去ろうとした。



やはり、終わりはやってきてしまった。
禁忌を犯した報いだろうか。


私は知っている。
だけど、また同じ過ちを繰り返すのではないだろうか。
終わりがくると知りながら、こないと信じてまた始めるだろう。

悲しみたくないから、幸せを感じないようにする人生よりも
振り切れる程の幸せと悲しみのある人生の方が好き。

いつか殺されたとして、そしたら私殺される程の幸せを手にしてたってこと。

朝起きて幸せで涙が滲んだ日を、知らないなんて
そんなのつまらない。
2010.05.03 A2Z-C マゾの力
A2Z
Cが、目を泳がせて
「今も、踏んで欲しいと思ってる。俺っておかしいよね。」
と今日3回目の台詞を言った。

私は意地の悪い気持ちになる。
なる程、踏んでもらいたいわけね。
だけど、その態度は何?踏んで欲しいと告げたら私が喜んで踏むとでも思ってるの?

「そうだねぇ。」

と流す。

「佐藤はさぁ、どんどん遠くに行くんだよ。もう俺なんかじゃ物足りなくなってるのはわかるよ。」

遠まわしに言わないで、素直に言ったらどうかしら。
お願いもしないで、頭も下げないで、被虐の喜びを得ようとするなんて腹が立つ。
こいつ、そこまでしたくはないけど、快感は得たいのね。

私は引き続き、意地悪な気持ちでCに言ってやることにした。

「教えてあげる。SMの世界ではね、そういう時にちゃんとお願いしないといけないんだよ。」

どうだ。
お前にはその権利がないのがよくわかっただろう。

「どうしよう、そんな。」

…驚いた。
Cは躊躇うように口をもごもごと動かし始めたのだ。
こいつは言おうとしている。
私に従おうとしているではないか。

そうして目を潤ませて、上目遣いで、私を見る。
その顔はまさに私の好きなマゾの瞳であった。

「お願いします。」

私は自分で、ここでスイッチが入ったのがわかった。

バチン。

「何が、お願いしますなの?」
「踏んで下さい、お願いします。」

テーブル越しにまずは足の甲を踏みつけてやると、Cは身悶えて息を漏らした。

「どこを?」

言いながら、ふくらはぎをさすってやればどこに欲しくなるかわかる。

「あ、あそこに…」

すぐになんて踏んでやらない。
こうした方が気持ちいいんだからね、お前は。
あ。私知らずにこいつのことをお前呼ばわりしている。

「ねぇ、ずっと私にこうして欲しかったんでしょう、考えていたんでしょう。」
「はい。ずっと…ずっとしてもらいたかった…!」

Cは堰を切ったように、ダムが崩壊して水が溢れるようにその言葉を私にぶつけた。

なんだ、こんなにやる気にさせて、そんなにお前はMとしての才能持ってたんじゃない。

私は足をずらして踏んでやることにした。

「あ…あぁ、ずっと考えてたんです、本当に」

バチンバチン
電気が走る。

なんて顔して言うのよ。
なんて可愛い顔して言うの。

あぁ、いけない。
こんなにしたら止まらなくなる。最後までやりたくなる。

今日はもうそんな時間はないし、ここは居酒屋だ。

Cは体を震わせていた。
痙攣している。

「これ以上やったら、逆に辛いからね、止めよう。」
「ぁ…」

痙攣が止まらない。
カタカタと腿をさすって落ち着かせようとしても、止まらない。

これは、どうしたことか。

「おかしい…俺やばいかも、し、れない。と、まらな、い」

声も震えている。

私はCを落ち着かせようと、頬に手を伸ばし撫でてやるが逆にCは甘い声を漏らして興奮するのだった。

「大丈夫よ、大丈夫。今度ちゃんと最後までやってあげるから。」

それでもカタカタと止まらなかった。
私はこの可愛らしい生き物となり果てた男に好意を持ち始めている。

本当に今度最後までやってやろうと思った。

「隣に、い、ってもいいで、すか?」

許せば、体を犬のようにスリ寄せてくる。
落ち着かせようと撫でると、陶酔して声を漏らす。

もう出してやらないと、この子は今日帰れないだろう。
こんなに震えていたら歩けない。

「トイレに行って出しておいで。そうしないと、もう止まらないよ。」
「ぁ…最、後に触って、もらえませんか、乳、首を…」



お願いすることを覚えた、お前へのご褒美だよ。
さぁ、出しておいで。


フラリと席に戻ってきたCのことを奴隷にしてやってもいいなと、私はコロリと気持ちが変わったのだった。

そう思わせる程の目をCがしたのだ。
A2Z
私のことが好きだというその男Aは、奴隷になるならこれからも会ってもいいよという言葉に
フラフラとやって来て、その運命が決まったのだ。

この間まで、私は彼と抱きしめあっていたのに
唇を重ねていたのに
今はつま先にしか許されない。

私は彼を離したくはなかった。
好きなままでいさせて、もっとさせて壊してしまいたかった。
そう思わせる程の魅力を彼は持っていたのだ。


新しくできた彼氏の部屋のチャイムが鳴る。
約束の時間よりも4分遅れた。
扉を開けると息を切らして、謝る頬に手を振り上げる。

「入りなさいよ。」

その場に正座をさせて、まだ肩を揺らすAの髪を掴み上げるがAは目を合わせない。

「私が来いって言ったら、すぐに来なさいと言ったでしょ。」
「…ごめんなさい。」
「無茶言ってるのなんてわかってるのよ。できないなら、できないでいい。」
「…。」
「嫌なら帰りなさい。」

そう言っても帰らないのを知っているから、私は言う。
そう言っても帰らない姿を確認したくて、私は言うのだ。

これは一種の愛情確認だ。
愛してると囁き合う代わりの行為なのだ。

「嫌じゃないです。」

背をむけて、おいでという言葉に体を小さくしてAは扉を開ける。
そこには当然彼氏がいる。

「…こんにちは。」

挨拶を向けられた、そのソファの横にスルリと座って
足元に正座をさせる。

タメ口で話すことはおろか、隣に座ることも許されない。
彼はその落差に一体どう思っているのだろうか。
そう考えるとワクワクしてきてしまう。

Aも悲しみや、悔しさややるせなさやを抱えながら、快感に似たものを感じているに違いない。
落ちていく、怪しい魅力に捕まえられているだろう。

彼氏は私の肩を抱き寄せるとAの肩に足を載せた。
そういう時の、弱々しい惨めとも表現できる瞳が私は好きだ。

「お前こんなこと繰り返してていいの?お前はもう抱き締めることもできないんだよ。」

そう言って彼氏は私をよけいに引き寄せて、キスをした。

「よく黙って見てられるな。まだ好きなの?」

まだ好きというより、もっと好きになっているだろう。

「ほら、足舐めてもいいよ。」
それを横目で見ながら私は彼氏とキスを続けた。


キスを止めても、制止がかかるまでAは足を舐め続けた。

「どんな気分?そんなになってまでも私の足を舐めてたいの?最低だね。」

そう、そういう目が好き。

「嬉しいの?こうされるのも嬉しいの?」
足に力を入れて顔を踏みつけてもAは抵抗しない。
好きなように足で弄ばれる。

彼氏の笑い声が響いて、もっと私を盛り上げた。
反対側の足で股間を踏みつけるとそれは堅い踏み心地をもっていた。

両足ともを離して、じっくりと見つめて唾をその顔に吐きかけた。

「変態。」

私ができる限りの蔑みの声と表情を使って、もう一度床に唾を吐きかける。

「ほら、いいよ。」

Aは床に出された唾をキレイに舐めとった。

「何度見ても無様だよな。男として恥ずかしくないのかね。俺だったらできないよ。」

彼氏は私をソファに倒すと、そのままセックスに持ち込もうとするようだった。
Aを呼んだ時点でわかっていたことだ。見せ付ける為に呼んだのだから。

肌の上ではじける音を聞きながら、Aは自分の膝を見つめていた。
「こっちを見ていないとダメよ。」

彼氏の手や唇が私の身体に触れるのをよく見て確認しないとダメ。
Aの顔は私の唾液で濡れて光っていた。


愛撫の後に、私は彼氏のを舐める。
それは私が愛撫される以上にAにとっては辛いことのようだった。

「早く…欲しい。」

甘い甘い声を出す。
それはAの為に出されたため息だ。
甘いため息でAを引っ掻く為だ。

「お前よく見ていろよ。」
彼氏が私に入ってくる間に、愛してると呟いた。

Aの瞳には涙が流れて、苦しそうな顔で唇を噛みしめていた。

「オナニーしてごらん。」

激しい感情の最中、自分を見失うような時でも私の言葉は届くようだった。
寧ろ私の言葉しか届かないのではないだろうか。
操られるように、Aは手を動かした。

「ああ…」
「いいって言うまでイくなよ。」

私の嬉しさの声の隙間に泣き声が埋まる。
その泣き声が高まると、私も何処にいるのかがわからなくなって、ただ心が気持ちいい。


「ああ、イく」
彼氏が強く動くと、私は大きな声を出した。
恨むように私を見るAと目が合う中、彼氏は果てた。

抱き締め合って、髪をなであう横では、なんの声なのかわからない声をあげてAは必死に手を動かしている。
顔は濡れているが、私の唾液なのか涙なのかは最早わからない。

私は腕に抱かれて
「イってごらん。」
と言った。




「ありがとうございました。」
彼氏がシャワーに立った後、汚れた身体を折り曲げて言う。
髪を掴んで見えた顔の涙の痕を、私は好きだと思う。

その身体を抱き締めて
「また、おいで。」

と言ったら、今までで一番大きな声をあげて泣いて私の肩に顔を埋める。

もっと好きになるだろう。

誰が?